フレームの寿命

一般にロードバイクフレームの寿命は、アルミが5年から10年、カーボンは10年から20年、クロモリは20年以上と言われています。フレームの劣化は、紫外線や酸化による素材の劣化と、力が加わることで弾力性が失われて行く劣化があります。この2つの劣化を合わせて「ヘタリ」と表現しています。寿命とはこのヘタリが閾値を越えるまでの年数を表しています

弾力性が失われて行く劣化とは、バネ秤等でよく見られる現象で、コイル型のバネは伸び縮み運動を繰り返すと、小さな力でも伸びる様になり、最終的には元の形に戻る事も出来なくなります。これが弾力性の劣化です。ロードバイクのフレームは多くの部分で板バネの原理を利用していますが、この板バネもコイルと同様に利用回数に比例して劣化していきます

また、紫外線や酸化による劣化は置いておくだけで劣化します。乗らなくても劣化します。つまりロードバイクのフレームは時間で劣化し、走っても劣化します。軽さを最優先した構造が仇となってママチャリとは比較にならない速度で劣化します

しかし、多くのユーザは寿命に比べて圧倒的に短い期間でフレームを交換します。その理由は大きく2つあると思います。1つ目は新製品への購買意欲。2つ目はフレームの破損です。今回は原因の一つであるフレームの破損について記載します。破損(クラック)の発生原因の多くは転倒による衝撃と思われがちですが、一般道を普通に走っていてもクラックは発生しています

カーボンフレーム

正式名称「炭素繊維強化プラスチック」は、金属のような錆や金属疲労による劣化がほぼなく、UVカットのクリア塗装が施されていれば紫外線による劣化もありません。カーボンは人間の一生ぐらいでヘタる事のない優秀な材質です

しかし、「フルカーボンフレーム」といっても全てがカーボンではありません。一部に金属が使われています。この金属が使われている事がクラック発生の要因であると言われています。

金属が使われている箇所は下記です

  • BB取付部
  • ディスクブレーキ取付部
  • アクスルシャフト取付部
  • シートポスト取付部
  • リアディレーラー取付部

これらの箇所は、高熱となったり、大きな力が掛かるためカーボンでは剛性を維持することが難しく、多くのメーカーが金属パーツを使っています。TREKは過去に圧入式BB(カーボン製)を採用していましたが今は全てネジ式(金属製)に変更しています。

カーボンと金属は相性が悪く、結合には、接着剤を利用するしかありません。「ビス止めにすれば接着剤は不要」と思われるかもしれませんが、質量の違いや、収縮の差、塩分に対する劣化の違いからビス止めにしても問題は解決しません。結果、BBなどは接着剤が利用されています。接着剤は紫外線や温度による劣化の激しい製品の一つです。

実際にネットでググってみると、これらのパーツが破損した例がいくつも出てきます。転倒していないのに壊れて行きます。普通に乗っていただけなのにクラックが発生しています。そして、ある日のメンテナンスで小さなクラックを発見します。それも力の掛かる主要パーツで発見するのです。「走行中に壊れなかった」事に安堵しながら、次のステップを考えます。メーカーに修理を依頼するのか?新しいフレームに交換するのか?恐らく多くの人がフレームを交換しています

SNS時代です。フレームを交換することで「納車」イベントが発生します。この魅力には勝てません。こうして多くの人が寿命を待たずにカーボンフレームを交換していきます。かくゆう私もその一人です。

アルミとチタンフレーム

アルミもチタンと自転車のフレーム素材としてはとても優秀です。比重も軽く、形状を工夫することで弾力性も上げる事が出来ます。BBやアクスルシャフト部分もアルミで十分な剛性を確保することが出来ます。

欠点は溶接です。フレーム全体を一度の鋳造で作ることが難しい為、パーツ毎に形成し溶接する必要があります。アルミは空気に触れると一瞬で酸化被膜が出来ます。この酸化被膜が悪の根源です。この被膜の融点は約2,000℃です。アルミ自身の融点は660℃で逆転しています。この酸化被膜が原因でロウ付けは出来ません。ラグ接続も出来ません。最終的に、溶接棒と言われる同一素材を上から落として盛る形で溶接します。アルミの接続面がミミズが張り付いた様に見えるのはこの為です

さらに接続部分に酸化被膜箇所が残ると強度は一気に下がっていきます。全ての工程で真空チャンバー(真空容器)を利用すれば酸化被膜が排除出来ますが、廉価を売りにするアルミフレームではまず不可能です。

つまり全てのアルミフレームには、酸化被膜を含んだ溶接部分があり、弱い接続部があると言う事です。この弱い箇所に力を掛け続けるとクラックが入っていきます。

誤解しないで頂きたいのは、力の掛からないパーツであればアルミ溶接は優秀な接続方法です。オートバイのアルミタンクなどがそれです。アルミの光沢や耐腐食性や比重の軽さから高価ですが愛用者も多い優秀なパーツです

チタンでも同様な事が起こります。真空容器(チャンバー)を利用する事で酸化被膜の発生を防ぐ方法を歌っているメーカーもあります。当然高価になります。しかし、こういったメーカーのフレームであっても、溶接部分からクラックが入った例は少なくありません。

ロードバイクのプロレースの歴史で、アルミフレームが利用された時代が短かった理由はこの辺りにあると思います

クロモリフレーム

正式名称は「クロムモリブデン鋼」は、とても扱いやすい金属でロードバイクの素材としては長い歴史を持ちます。アルミやチタンに比べても溶接は容易でロウ付けラグ付けも出来ます。転倒によりクラックが入ったとしても、塗装が剥げても赤錆が出ても、修復できます。長期利用を考えれば最高の素材です。しかし、レース利用を考えるとクロモリは選択肢に入りません。それは圧倒的な比重の重さと弾力性の違いです。

「ロングライドであれば、クロモリフレームも選択肢に入る」とも言われます。これは、乗り方の違いにより感じる疲労度の差だと思います。カーボンフレームに乗っているとフレームから「もっとパワーを出せ、ケイデンスを上げろ」と言われている様な気になり、その気になってドンドン上げていくと段々楽しくなってランナーズハイの状態まで行けます。しかし最終的に体力の限界を超えている事に気が付きます。クロモリフレームからはそんなメッセージを受け取ることも無く淡々と走る事が出来ます。この辺りが、「ロングライドにはクロモリ」と言われる所以だと思います

飛行機輪行にはクロモリフレーム

ロードバイクのフレームは複数本所持していますが、外を走るフレームは2本ともクロモリです。

  1. クロモリフレームの見た目が好き
  2. カーボンフレームを生かす90rpmの回転数を維持できない
  3. 疲れが残らない
  4. 倒しても壊れない

これらがクロモリフレームを愛用している理由ですが、飛行機輪行では4が大きな理由です。空港ではロードバイクを第三者に預ける事になります。実際に羽田空港でも輪行袋でなくハードケースを利用している人を多く見かけます。私もカーボンフレームなら利用すると思います。しかしこのハードケース、現地での行動範囲を狭める要因になります。

結局あれこれ考えた挙句、今のクロモリフレーム&輪行袋に落ち着いています。「一人で走る自転車乗りは、クロモリフレームで十分」これが今時点での結論です