ロードバイクのブレーキ性能について雑誌では色々な切り口で評価されていますが、一番の基準は引きの軽さです。小さな力で止まるブレーキが優秀なブレーキです。カンチブレーキやVブレーキのレバーを手が腱鞘炎になるほど握りしめた体験がある人なら同意頂けると思います
雑誌や、有識者のWEBサイトには、Vブレーキ、カンチブレーキ、ディスクブレーキの比較を、制動距離、急制動時のロック、タイヤ幅等色々な切り口で評価しています。しかし、3者に数値的に大きな差はありません。例えばタイヤがロックするほどの大きな制動力があるのはVブレーキです。制動力は弱いが自由度が高くメンテナンスし易いのはカンチブレーキです。ディスクブレーキの操作性は群を抜いています。それぞれに長所と短所があり使い方により適切なブレーキは異なります
因みに一般道を走る場合、制動力の違いはほとんど意味がありません。なぜならアスファルト上で時速30㎞からタイヤをロックさせる事はどんなブレーキであっても至難の業だからです。制動力の違いはレースでの下りやオフロードの悪路では大きな効果を発揮しますが、アスファルトでは大きな差はありません。一般道での大きな効果は長い下りで手が痛くならない事だけです
この様に書くと、ディスクブレーキなら、アクスルシャフトによる剛性が上がる事や、熱によるホイールへのダメージが抑えられる等の相乗効果を唱えてくる人が居ます。ここでは純粋にブレーキ自体の性能に対するを記載します
油圧ディスクブレーキが最強
引きの軽さを追及するならワイヤー方式は油圧方式に勝てません。曲がりくねったアウターケーブルの中をインナーケーブルが動くとき、大きな摩擦が発生します。この摩擦がレバーを握ったときの力を減少させます。一方、油圧方式では摩擦が発生しません。レバーを引いた力がそのままブレーキに伝わります。これが軽さの違いです。つまり、ブレーキの良し悪しは、油圧を採用できるかどうかで、ブレーキ自身の構造には関係ないのです。仮にカンチブレーキの油圧式が開発されていれば、カンチブレーキの方が優秀と評価される可能性もあったと思います
ディスクブレーキのもう一つのメリットとしてコントロール性能があります。例えば700cのロードバイクで時速40kmで走っているとき、カンチブレーキのブレーキシューが接触するリム面(ブレーキ面)は中心から約300㎜の位置にあり時速39kmで動いています。一方ディクスローターのブレーキ面は中心から60㎜の位置にあり時速10km程度です。中心からの距離(直径)が短いディスクブレーキの方がゆっくり動きます。この速度差4倍が減速しやすさ、コントロール性能に影響します。ブレーキ面の移動速度は遅ければ遅いほどコントロールしやすくなります。この違いによりディスクブレーキのコントロール性能は優れていると言えます。しかし、これもホビーライダーには性能を判断する材料にはなりません。これが時速80kmでウェット路面であれば、コントロール性能は重要です。プロがダウンヒルを行う時には大きなアドバンテージとなります。しかし時速40kmでドライ路面を走るホビーライダーにはあまり意味はありません。また、雑誌の記事で、「ディスクブレーキは雨天での制動距離が短い」と掲載されていますが、多くの人は雨の日にロードバイクに乗らないのでこれも長所には成りません。
小さな力で減速&停止出来るディスクブレーキは最強のブレーキです。しかし、問題はメンテナンスです。このブレーキは、一度不具合が起きると対処出来る人が限られるほど難しいブレーキなのです。理由は後半の章で記載します
機械式ディスクブレーキの問題
世の中には機械式と油圧式のディスクブレーキがあります。機械式はワイヤーでブレーキを稼働される構造です。私は、この機械式ディスクブレーキが嫌いです。構造的にNGだと思っています。理由は2つあります。1つはケーブルの長さです。リムブレーキに比べてブレーキ自体がホイールの中心にあるためどうしてもケーブルが長くなります。長くなれば摩擦も多くなりほつれる頻度も上がってきます。さらにリアブレーキ付近のケーブルの取り回し(配線)は最悪です。問題外です。チェーンステーから上に昇ってブレーキに接続されています。これは高確率で水没します。最新技術のディスクブレーキシステムを採用しても、諸悪の根源であるワイヤーを一番長く利用し湾曲させている構造を認めることは出来ません。
もう一つの理由は、片押しキャリパーである事です。機械式ディスクブレーキは構造上対向型を作ることが出来ません。これにより様々な障害発生確率が上がります

- ローターと固定パッド側の間隔を狭く可動パッド側を広く設定しなければならない
- パッドが歪に削れて行くので、定期的にローターの位置を調整しなければならない
- ローターは段々固定パッド側に曲がっていき、最後は異音が発生します
素人が考えても「ワイヤーを引いて2つのピストンを動かすのは難しい」と分かります。この片押し構造が音鳴りを発生させている原因の一つでもあると言われています
つまり、ディスクブレーキなら油圧を選択すべきなのです
ディスクブレーキの本当のメリット
ホイールに求められる機能は、力で速く走る事と正しく止まれることです。ロードバイクのブレーキシステムは、運動量を熱量に変換して減速します。長い下りをブレーキを掛けながら走ると接触面はかなり高温になります。ディクスブレーキのローターは300度程度まであがりリムブレーキのカーボンホイールなら簡単に歪みます
ディクスブレーキでは発熱するのはローターなのでホイールは熱効率を気にせず設計が出来ます。軽く出来る期待もありましたが、2025年5月現在、軽くは出来ていません。理由はブレーキ位置です。ディスクブレーキの減速は、スポークには大きな力がかかります。その為、中心とタイヤを繋ぐスポーク回りを強化するしかありません。結果、発熱に対する考慮は必要なくなりましたが、スポークに対する考慮が必要になりホイールは軽くなりませんでした
重さについては残念です、熱に対するホイールの仕事が減ったのは事実で、ディスクブレーキによる大きな影響です。事実、「止まる」ことが出来ないと事故に繋がるだけに、ホイール製造メーカーからすると大きな荷物を一つ降ろせた事になります
油圧ディスクブレーキのデメリット
最後に油圧ディスクブレーキのデメリットを記載します。重量の増加、輪行不向き、価格、色々ありますが、これらは小さな問題です。一番の問題はユーザメンテナンスに高いスキルが必要になる事です。油圧ディスクブレーキはワイヤーを利用しない為、カンチブレーキに比べて日々のメンテナンスは少なくなります。だたし、一度問題が発生してしまうと素人には難しいブレーキです。ブレーキフルード管理、パッド交換、クリアランス調整、エアー噛み、パッドの音鳴り等、これらの修理は総じて難しい作業になります。音鳴り一つとっても、複数の原因があり最終的にはクリアランス0.5㎜以下の戦いになります。技術は慣れです。実施回数です。沢山の作業を実施すれば技術力は上がりますが、一般ライダーがDIYで行うディスクブレーキのメンテナンス作業は2年に一回程度です。技術の向上が難しい頻度です
また、車の場合は、技術力を担保するために国土交通省が「自動車整備士技能検定」制度があり素人が他人の車を修理出来ない様にしています。しかし自転車には資格がありません(自転車技士は民間資格)。昨日から働いている店員さんもお客様の自転車を修理することが出来ます。よくよく考えると怖いことです
飛行機輪行を多用する私には、油圧ディスクブレーキのメンテナンスが大きなデメリットになりました。結局、悩んだ挙句カンチブレーキで空港へ行くことが多くなっています。過去の経験になりますが、100キロのライド中、ディスクブレーキの悲鳴音(音鳴り)を聞き続けるのは堪えられませんでした
結論
油圧ディスクブレーキは軽くて良く効く最強のブレーキシステム。ただし、自分でメンテナンス出来ない人、輪行多用者は止めておいた方が無難。最終的に後悔する。レースに出る人には必須装備。頑張って技術を磨こう

