クロームメッキ被膜は非常に硬くて頑丈で、耐蝕性、耐変色性にも優れています。しかし、旧車の多くはメッキがボロボロです。錆びて変色しているものもあります。今回はクロームメッキの錆とメンテナンスについて記載します
腐食

錆は金属と酸素が結びつく酸化現象です。鉄の酸化現象には黒錆と赤錆があります。中華鍋につくのが黒錆で、釘につくのが赤錆です。黒錆は鍋を守りますが、赤錆は釘を破壊します。ここでは赤錆のことを「腐食」と表記します。黒錆のことは「酸化」と表記します。腐食とは化学的な作用によって物体の外見や機能が損なわれる事です。
前提としてクロームメッキの主要成分であるクロムは腐食しません。クロムは酸素と結びつき易く酸化皮膜を形成します。つまり常温で放置すると勝手に酸化します。この膜は「不動態皮膜」と呼ばれ自己再生可します。
オートバイのクロームメッキも腐食しません。腐食している様に見えるのはメッキ自体ではなく下の素材です。メッキの隙間から酸素や水、塩分が入り込み下の素材が腐敗します
腐敗の条件

新車のクロームメッキはピカピカですが、拡大するとクラックと言われる小さな亀裂や穴が沢山あります。下層素材の腐敗はこの穴から水分が入り込むことで起こります。実際に、この穴は非常に小さく雨が凌げる場所に放置しても殆ど腐敗しません。ところが条件下の場合には一気に腐敗が進みます
- 泥汚れが付いた状態で放置
- 塩分が付いた状態で放置
特に塩分には注意が必要で、温度や湿度等の条件が揃うと一晩で腐敗が始まるほど強力です。塩分には次の特性があります
- 吸湿性が高く大気中の水分を吸収し塩水に変化する
- 塩水の塩化物イオンには不動態皮膜を破壊しする効果がありステンレスも腐敗させます
特に「水分を吸収する特性」は厄介です。オートバイへの塩分付着は海岸線を走行した時に起こります。最初に、塩分を含んだ空気がバイクに纏わりつきます。向かい風の気化熱現象により水分だけが蒸発し塩がオートバイに付着します。その上からまた塩分を含んだ空気が纏わりつきます。そして蒸発と付着。塩の層がどんどん厚くなって行きます。家に帰ってバイクを止めると腐敗が始まります。はじめに空気中の水分を吸収し個体の塩から液体の塩水に変化します。液体となった塩はメッキの小さな穴から侵入し下層素材を腐食させます。下層素材がステンレスであっても塩水はどんどん腐敗させていきます。土汚れや埃でも同様の現象は起きますが、塩分の腐敗スピードは脅威的に速く早々の対処が必要になります
腐敗させないために

腐敗を防ぐには洗車と乾燥です。塩分は水洗いで簡単に落とすことが出来ます。手順は下記です
- 高圧散水ノズルを利用し塩分や汚れを洗い流す
- ブロアーを使って水分を飛ばす
海岸線を走った後はその日中にこの作業が必要です。高圧水で細かい部分まで水を掛けることにより塩分を飛ばします。その後ブロアーを使って水分を飛ばします。オートバイは細かいパーツが多い為、タオルを使った拭き取りよりブロアーで飛ばす方が簡単です。この2つの工程を実施することでクロームメッキの腐敗を防ぐことが出来ます
腐敗してしまったら

腐敗の状態は大きく3段階に分かれます
- 白錆が発生している時
白い斑点状のシミ汚れです。雨や水道水などに含まれるミネラルやカルシウムなどが原因で発生します。この段階はまだ腐敗してません。放置すると腐敗が始まります - 表面は平だが赤錆の色が出ている
穴から浸み込んだ水分により下層素材の腐敗が始まっています。軽度な状態ならリカバリー可能です - メッキの剥がれている時
腐敗により下層素材が腐敗し膨らんでいる状態です。修復には再メッキが必要です

1の場合はクロームメッキ用の研磨剤やホリッシュで落とすことが出来ます。NAKARAI社のメッキングやHoltsのクロームクリーンなど色々な商品が販売されていますが、私のお気に入りはMOTHERS CHROME POLISHです。ジェルタイプで手軽に利用出来ます。効果時間も長くズボラな私にはピッタリです。
3の場合は諦めるしかありません。再メッキが必要です。2の状態であれば、ボンスターを試してみるべきです。ボンスターは、赤錆より硬くクロームメッキより柔らかい素材で出来ています。メッキがキズ付くこと無く赤錆だけを落としてくれます。神商品です。中古バイク販売店では必須商品です。因みに、錆び取りに利用出来るスチールワタシはボンスターだけです。ボンスター以外はNGです。