備忘録としてこの記事をアップします。パルス信号を入力し速度と距離を表示するデジタルメータの巻き上げ方法を記載します。(2025年1月27日 更新済み)
巻き上げ作業の注意点
メータの巻き戻しは違法ですが巻き上げは違法ではありません。最近のメータは機能的にも物理的にも巻き戻しが出来ません。さらに、1周する(つまり99999を超えて0に戻る)事が出来ないメータがほとんどです。
恐らくこのページにたどり着いた人は、交換したメータを本来の距離に合わせたい人だと思います。そんな方の参考になればと思い方法を記載します。
最初に御理解頂きたい事は、「メータは精密機器」と言う事です。無理な電圧が掛かれば壊れます。実際私もこの作業中にメータを1つを壊しています。記載した方法を実施しても希望する結果が得られないこともあります。全ては自己責任で実施しましょう
巻き上げ方法
メータの基本的な動きは以下の様になります
- キーをONにするとメータに主力電流が流れ起動します
- 通常メータには主力電源の他に下記ケーブルが接続されています。
・ウィンカー
・ハザードランプ
・車速センサー
・ハイビーム
・トリップメータ切替
・各種警告灯 etc - 各ケーブルから送られる信号によりLEDライトが点灯したり表示の切替えを行っています
- 車速センサーからはパルス信号(詳細は別途)が入力されます
- パルス信号はタイヤやギアの回転運動から取得します。速度が上がると信号は細かく(周波数は高く)なります
- メータは周波数に応じた速度を表示します
上記が一般的なメータの動きになります。残念ながらオドメータ自身を簡単に進める方法はありません。ここでは、車速センサーから入力されるパルス信号を疑似的に作成し走行状態を作りだします。その状態を長時間保つことでオドメータを進めるます
手順は以下になります
- 接続されているコネクターを全て外しメータを取り出します
- メータに直接電圧をかけて稼働状態にします
- 疑似パルス信号をメータに入力し走行速度を表示させます
- 走行状態を長時間保ちオドメータを進めます
事前調査
始めにメータに接続されているコネクターのピンを調査します。必要なピンは2種類(3つ)です
- メータへのパルス信号入力ピン(プラスとマイナス)
- メータ自身が稼働するための電源ピン(プラスとマイナス)
メータへのパルス信号入力ピン、電源プラスとマイナスの計3本のピンが分かれば勝ったも同然です。通常1のマイナスと2のマイナスは繋がっているので主力電源である2のマイナスが見つかれば大丈夫です。上記は該当車両の配線図があれば判断出来ます。因みにハーレーダビッドソンはここからからダウンロードできます。

配線図が無くても一般のオートバイならテスターがあれば判断可能です。1から探していきます。通常は車速センサーは前後のスプロケットやフロントホイールのそばに設置されています。図の様なパーツ(車速センサー)を探しましょう。見つけたら、そこから3本の線が出ているはずです。3本の線はそれぞれ
- 車速センサーを稼働させるプラスの線
- 車速センサーを稼働させるマイナスの線
- パルス信号を送るプラスの線
この3本です。必要なのは「パルス信号を送る線」です。この線がメータに接続されているはずです。メータ側の接続ピンを探します。
次は、2のプラスとマイナスです。オートバイのマイナスはフレームアースとなっているので、テスターを当ててフレームと導通しているピンを探します。プラスはキーを捻った時に12V(バッテリー電圧)が出る線です。テスターで電圧を測りましょう。因みに一般的にプラス線は赤色で、マイナス線は黒色が使われます
HarleyDavidson FLSTSのピン


私のオートバイはHarleyDavidsonFLSTSです。ここではその車両ピンのアサイン説明します。必要のない方は読み飛ばして下さい。
配線図は、線の色を確認することが重要です。基本は赤は+端子、黒がー端子です。上記ではメイン電源のプラスにオレンジ白が使われ、メイン電源のマイナスには黒、車速センサーへの電源プラスにに赤、マイナスに黒が使われています。パルスは配線図では白、実際のコネクターでは緑となっています。
メイン電源の12Vはイグニッションから来ていることが多いので、配線図とにらめっこすれば分かります。次はアースです。フレームに落としてあるのでコネクター側にテスターを当てれば判明します。最後にハルス信号です。通常車速センサーへは3本の線が出ています。2本は車速センサーを稼働させるための電源出力です。残りの一本がパルス入力となります。
このバイクのメータの配線は以下の様になっていました。
- 1番ピン:電源 12V(オレンジ白の線)
- 7番ピン:車速センサーアース(細い黒の線)
- 8番ピン:車速センサー電源12V(細い赤の線)
- 9番ピン:パルス信号(細い緑の線)
- 10番ピン:電源アース(太い黒の線)
- 2番と11番はオドメータとトリップメータの切替でショートさせると表示が変わります
利用するのは、1番、9番、10番ピンです。7番と8番は利用しません。7番と8番ピンは車速センサーを稼働させるための電源です。因みに車速センサーに過電圧を掛けると破損します。1番と10番は主電源です。ここに12Vを掛けます。一番大事なピンは9番です。このピンは車速センサーで発生したパルスを受け取るピンです。ここに疑似的なパルスを送り込めばメータは速度を表示します。
詳細説明:バッテリーからイグニッションキー(鍵部分)を経由して12Vがメータに供給されます(1番ピンと10番ピン)。この電源はメータ内部で分岐され一部が車速センサー(7番ピンと8番ピン)に送られます。車速センサーは、計測したパルス信号をメータ(9番ピン)に返しています。つまり、メータから見て1番ピン、9番ピン、10番ピンは入力で、7番ピンと8番ピンは出力です。
機器を用意する
私が用意した機器は下記4つです
- 直流12V安定化電源(Amazonリンク)
- 周波数発生器 DC 3.3V-30V 5-30mA 1Hz-150kHz(Amazonリンク)
- 降圧コンバータ DC 0.5-30V(Amazonリンク)
- 配線コード
直流12V安定化電源は該当車両のバッテリーでも代替できますが、巻き上げには数日かかることもあります。別途、直流安定化電源を用意したほうが無難です。周波数発生器のパルス発信機はPCの冷却ファンで代替する方法もありますが、この方法はお勧めしません。理由は、該当メータが必要とするパルス電圧と周波数が不明な事です。この2つが規定値から大きく外れるとメータが壊れます。降圧コンバータを用意したのは、このパルス信号の電圧を制御する為です。パルスには周期と振幅の2つの大きさがあります。どちらの一方でも許容範囲を超えるとメータが壊れます。降圧コンバータはこの振幅を小さくすることが出来ます。周波数発生器も同様で、車速センサーが発生する周波数がタイヤ1回転=1パルスとは限りません。メータの破壊を避けるためにも調整が可能な機器を用意した方が良いです。上にご紹介した商品ですが、周波数発生器と降圧コンバーターは最安値に近い製品です。直流12V安定化電源をさらに廉価な物にすれば総額5,000円程度で揃えることが出来ます

接続方法

直流12v安定化電源からはメータと降圧コンバータの2つの入力に繋げます。降圧コンバータの出力は周波数発発生器の入力に、周波数発生器の出力はメータのパルス信号入力に繋げます。この様に接続することでメータに入力されるパルス信号の振幅と周期を制御することができます。次のステップからはこの接続を前提としてメータの針の振れを調査しています。
実際の接続状況は以下になります。直流12v安定化電源が左上にあります


起動手順
接続チェックと稼働電圧、稼働周波数を見つけます。下記は適正値を探すための手順です
- 全てのケーブルが外れていることを確認
- 直流安定化電源になにも繋がない状態で電源をいれ出力電圧が12Vである事を確認する
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 直流安定化電源からメータの1番と10番に接続し電源を入れる → メータの点灯を確認
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 直流安定化電源から降圧コンバーターに接続し電源を入れる → 降圧コンバーターの出力を0から3Vに上げる
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 降圧コンバーターの出力を周波数発信機に接続し電源を入れる → 周波数を10Hz、デューティ比(パルスのONーOFF比)は50%に設定
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 周波数発信機のパルス出力をメータの9番ピンに接続し電源を入れる → メータの針が振れればOK
- 周波数を100Hz程度まで上げても針が振れない場合、パルス電圧が低い事が考えられる。一旦周波数を下げ、降圧コンバーターの電圧を12V までゆっくり上げる。12Vまで上げても針が振れない場合、他の仕様や接続ミスが考えられます
- 針が振れた場合、パルス電圧を固定しパルス周波数を上げ、メータを最大速度に合わせる。
メータの調整

テスト検証の結果
・パルス電圧:3Vから12V まで針が振れた
・周波数:5㎐ぐらいから3K㎐まで針が振れた。
テスト結果を踏まえ設定したパルス値は、電圧は5V,周波数は3k㎐です。その時メータは時速120MPH(193㎞)を指しています。
オドメータの進め方
メータの針が振れればオドメータもそれに比例して増えて行きます。上記では時速193㎞で走っている事になりこの状態でオドメータを3万キロ進めるためには
30,000㎞ ÷ 時速193㎞ = 155.44時間 → 6日+11時間26分
この様に長時間の作業となるため、直流安定化電源は放熱効果の良い製品を選ぶことが必要です